フランス革命後の近代社会は、科学を社会の不可欠の構成要素として制度化した。なるほど十七世紀にも部分的な科学の制度化が近代国家によってなされたが、その影響はほんの一部の数学者を中心と寸るエリート的科学者にしか及ばなかった。十八世紀末以降の科…
テクノロジーに応用される科学の登場 本格的な「科学の時代」としての十九世紀―実験諸科学の理論化 本格的なヨーロッパの近代は一七八九年のフランス革命とともに始まったと言われる。実は本格的な「科学の時代」もその革命が進展するにつれて到来するのであ…
マキアヴェッリのリアリズムは、前述のようにベイコンによって高く評価され、さらにホッブズによって近代科学的よそおいをほどこされた。ホッブズは国家を機械と見たのである。伝統的主権者(王権)は神秘的仮面をはがされ、国家をよりよく統治し、人民に安…
ニュートンが集大成したようなテクノロジー科学はたんに思想上の成果として学者たちの規範になっただけではなかった。それは政治的・社会的にも支持を獲得することができた。というより、政治的・社会的に同様のエートスがすでに生成され定着しつつあったた…
十七世紀に科学の第一人者がアルキメデスからニュートンに移るとともに、中心的学問内容にも変動が起こった。アルキメデスが主にたずさわったのは数学と実用数学(静力学など)であった。せいぜい純粋数学とその周辺部であったと言ってよい。他方、ニュート…
ここで、どうしてイスラーム世界、ラテン-キリスト教世界で近代科学が生み出されなかったのか、その理由を考えてみることにしよう。これらの文明は、アルキメデスの数学を頂点とする古典科学を所有していた。それのみならず、イスラーム、キリスト教の教義は…
ところで中世ヨーロッパにおいては、「技芸」と「哲学」は別々の場所で、別々の人たちによって担われていた。前者には職人腦(基本的に無学であり、仕事の伝承は徒弟修業を通していたが、後者には大学の学者(基本的に子仕事を軽蔑していた)がたずさわって…
十七世紀の科学革命とともに、世界の科学的伝統の主役はアルキメデスからニュートンに代わった。アルキメデスはなるほど機械学的手法を研究に用いたものの、間接証明(帰謬法)の論理的力によってアルキメデスになりえたのであった。ニュートンは「テクノロ…
ギリシヤの理論的精神はディアレクティケーによって育まれ、それは数学においてはユークリフトの『原論』、哲学においてはプラトンのさまざまな対話鎬の中に生きて継承されてゆくことになった。それでは、ギリシヤの科学的精神を最高に華咲かせた人はどうい…
理論数学がいかなる経緯で古代ギリシヤで成立したのかの歴史理論はハンガリーの数学史家アルバッドーサボーによって提起された(「ユークリッド公理系の始原」一九六〇年、『ギリシヤ数学の始原』一九六九年)。彼は数学における厳密な論証とはいかなるもの…
ギリシャの「奇跡」 十七世紀のホッブズが「科学的」な知識の代表とみて高く評価したのは数学、なかんずく公理論的に体系づけられた幾何学であった。彼はユークリッド『原論』の第一巻の最後のほうに置かれた命題(ピュタゴラスの定理)を見て、それを論駁し…
近代日本が導入を図った「科学」は、西欧近代科学、しかも第二の科学革命を十九世紀後半の、専門化され、技術に応用を見いだしていた科学であった。わが国は、世界史的に見て、稀々ほどに、短期間で急速な政体の革命を成しとげ、文化的スタイルの変革を遂行…
科学はなにも以上でとりあげた「具体の科学」、古典科学、近代科学に限られるわけではない。非西洋地域の文明において育まれた、がなり高度に発達をとげた科学が存在したし、現に存在してもいる。その代表が中国医学命医学)であり、日本の前近代数学である…
フランス革命が進展し、その急進主義的展開が一段落すると、近代科学を高等教育施設の中に制度化しようとする動きが本格化した。フランスのエコルーポリテクニク(かつては「理工科学校」という訳語が使われたことがある)はその典型であった。この動きはナ…
西欧近代科学には大きく分けて二つの形態が認められる。第一が、ルネサンス以降展開された科学革命(第一の科学革命)とともに生まれた近世科学であり、第二が、フランス革命以降の本格的な近代社会で育まれた近代科学である。フランス革命とともに起こり始…
自然学(自然に関することがら、の意味)は論理的・経験的方法で展開された。その代表例がアリストテレスの『白然学』である。それは日常的観察と徹底した論理的思索である。自然学で議論できない超越的存在、自然現象をひきおこす究極の原因などは、アリス…
「古典科学」と呼ばれるべき形態の科学は古代ギリシャで生まれた。「具体の科学」はしばしば「神話的思考」と親和的であることがありうる。「神話的思考」とは海や川の水や雨水を天に住む龍す神す超人的人間のしわざにしたりするような思考法であるが、古代…
要するに、レヴィ‥ストロースが「具体の科学」としてとらえるものの考え方は、必然的に近代科学へと発展し、発達レヅエルの階梯を昇ってゆく出発点となるという意味において、原初形態なのではない。「具体の科学」と近代科学双方の理解のパターンは必ずしも…
さまざまな文化共同体、とりわけ分化をもつ歴史的文明以外の研究が進み、文化人類学と呼ばれる学問が成立した。その学問が発展するにつれて、ある種の文化共同体には固有の、数なり自然に関する秩序立った知識が存在することが明らかになった。 このような発…
観 「ナイン・トゥ・ファイブかセブン・イレブンか」、[平凡な研究労働者かスーパースター科学者か]、「実験室内の職業か実験室外の職業か」その選択は、キミが人生や仕事にどういう価値をおくかで決まってくる。ローゼン(S。 Rosen)とポール(C。 Paし)|…
研究者として生きる道のもう1つの新しい動向は、実験室以外で働く人生だ。科学研究が好きだし、博士号もとった。けど、実験室での研究も単なる|つの労働である。人生は実験室での研究がすべてではない。豊かに幸福に生きる手段として職業があるだけだ。だ…
科学社会学者マッギンによれば、現代社会では研究者・技術者はとても多い。少数の特権的職業というより、ありふれた大衆的な職業である。研究そのものも、1人1人の研究者が独創的なアイデアを思いつき、実験をし、大発見をする時代ではない。パラダイムに…
世の中には、すばらしく美しい景色があり、珍しい建造物があり、多様な人々の生活がある。世界のあちこちを旅行したいと思う、胸がワクワクするような話題の映画は何とか時間をつくって見ておきたい。人生を深く考えさせられる感動的な小説も、パラパラする…
22歳で大学院に入学して以来、約25年間、 、すべての時間をバイオ研究に費やしてきた。働き盛りの人生を全部研究に捧げてきた。1日24時間しかないが、できるだけ長時間研究に打ち込めるように、生活、感情、考え方をコントロールしてきた。時間だけで…
「ニューヨークはワシントンに近いからこっちにおいでよ。ボクがワシントンD.C.に行く機会はないんだ。ワシントンDCからならバスや電車で結構便利だよ。安いし。クルマは駐車に困ったりでそれほど便利じゃない。なに奥さんとー緒?それならクルマの方が安い…
今日電話してネ。今日だよ 昼食はいつも、研究所の別棟の1階にある小さなカフェテリアに行く。ここのサラダバーは世界で一番うまい。サラダバーといっでも、ネタは20種類ほどあって、 日本と違うのは、チャーハン、焼きそば、スパゲティー、すき焼きなども…
、NIHの科学運営官(と科学運営官になりたい人)を教育する研修会に参加した。丸2日間、朝8時20分から夕方5時までというビッシリのスケジュールだった。ベセスダ市のNIHキャンパスにあるナッチャービルの大きな会議室が会場たった。初日の朝、受付で…
タマノイさんがアメリカ西海岸のバイオテク状況を話してくれた。「西海岸では、UCLAはバイオテクは実は少し弱いんです。企業としてはアムジェン(Amgene)社しかないんです。UCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)には、カルビオケム(Calbiochem)…
マリコ夫人(UCLA人類学教授)も話に加わってきた。 「私の研究室に日本からきた女子学生が2人いるの。その1人が先日、私のところにわざわざきて、『このあいだ連れてきた男の子はただの友達でボーイフレンドじゃありません』というのよ。そんなことフ…
臨床医学系を除いたUCLAの生命科学系の教官(ファカルティ:Faculty)は約190名いる タマノイさんのいる微生物・分子遺伝学科、それに、細胞生物学科、生化学科、薬理学科などなどが含まれている。その生命科学系の各学科が一括して大学院生を入学させ…