第五ステップで完璧な英語がモノになる

 

 「この方法で新聞一部を全部読み終えることができたら、たいていの英語の本や刊行物も辞書なしですらすら読めるようになるよ」

 

 「先生、この方法をどうやって考え出したんですか」

 

 「考え出したというほどのものじゃない。最初はどちらかといえば思いつきに近いな。ドイツにいたころ、休みを利用してプレス作業のアルバイトをしたことがある。単純作業だから手と足は忙しいんだが、目と頭はヒマなので、作業中も雑誌をよく読んでいたんだ。それでどうせ読むならと、『シュピーゲル』という高度な内容の雑誌にチャレンジしてみた。そのドイツ語はほんとうにむずかしかったよ。それでも辞書をそばに置いて読むわけにもいかないだろう、とにかくわからないなりに読みつづけたよ。そうしたら辞書なしでも、わからない単語がいくつかあっても  記事内容によって時間の差はあったがi最後には、どの内容もほとんど理解できていることに気づいたんだ」

 

 「はい」

 

 「そうやって、最初のシュピーゲルを三週問で読み終えた。二日間の週末休みをはさんで、次の月曜日に二冊目のシュピゲールを習慣のように開いて読みはしめた。すると、また不思議なことが起こった。何度も読み返すまでもなく、記事の内容がたやすく理解できるじゃないか。おやっと思い、次の記事に移ったが、やはり同じだった。そのとき、このやり方は語学習得法としては、少なくとも読解力をつける方法としてはかなり有効なんじゃないかと思った。第一ステップから第四ステップまでは、この方法をリスニングに応用したものなのさ」

 

 「なるほどなあ。でも、どうして最初からむずかしい雑誌を読もうとしたんですか。私な

らやさしそうな女性誌なんかを選んだでしょうに」

 

 「最初はそう考えたよ。ところが、ドイツではそういう雑誌はたいてい薄っぺらで、記事もろくに載っていないんだ。結局はそれがさいわいしたんだな。休暇が終わって大学で講義を聞いたとき、教授の声がすんなり耳に入ってきて、その内容もじつにスムーズに理解できるんだ。その前の学期ではリスニングの力が足りなくて、講義内容を理解することより眠気を追い払うのに忙しかっだのに、だ。じつに不思議な経験だったな」

 

 「それは先生のように、もともと語学の才能がある人だけが体験できることで、そうじゃない人は、そう簡単にはいかないんじゃないでしょうか」

 

 「私に語学の才能があるって? それはないな。まったくないよ。他の人より語学が好き

だったとはいえるかもしれないがね。好きなぶん、関心も高く、集中もできただけさ」

 「そのとおりなんでしょうが、先生、ちょっと、カッコよすぎませんか」

 

 「はは。でも、ほんとうにそうなんだ。それは才能の問題じゃない。前に話しかとおり、たしかに語学の素質に個人差はあるが、それはたいした問題ではないんだ。やり方さえ間違えなければ、多少の時間の差があるだけで、最後に到達する水準はがれでも同じだよ」

 

 訪ねてきたときとは違い、Kは明るい顔で帰っていった。彼女の性格からいって、この最終段階もさっと最後までやり遂げるにちがいない。彼女がその高い英語力によって外資系の会社に再就職できれば、彼女をクビにした会社の人事管理がまったく誤っていることの証明にもなるわけである。

 

 さて、ここでKに教えた、いわば「外資系企業の語学面接にかならす合格する英語習得法」こそが、私のノウハウの最終段階である第五ステップなのである。それは、これまでの英語力のレベルを一段高めるステップであると同時に、すべてを総括する仕上げの段階でもある。

 

  これを終えることができれば、あなたの英語力は完璧になる。第四ステップまでで、英語を読み、書き、話す能力はほぼ完成の域に達しているが、新聞に掲載されている多種多様な内容の英語に接することで、さらに質を高め、量を増し、幅を広げることになるからである。新聞に掲載されている政治、経済、社会、文化、芸術、スポーツなど幅広い分野にわたる記事、論説やコラム、広告やマンガなどは、その日、その国に起こった多彩な出来事を、たしかな視点と文章によって表現している。

 

 それを言葉どおりにすべて読み込んでいくことで、多様で知的で高度で、かつ実用的な英語が自分の中に入力できる。そのため、私たちの脳の中で英語力が「自己発展」する度合いも飛躍的なものになる。いわば英語が語学としても、文化としても、教養としても身につくのである。この段階までいたれば、私のノウハウは完成する。

 

『英語は絶対、勉強するな』チョン チャンヨン著 (定価1300円)より