自尊心をもてば英語で堂々と話せる

 

 私が最初に、外国語で自分の意見を発表したのは留学中のセミナーの時間だった。その日のセミナーのテーマは「外国の社会文化事情」といったたぐいのものだったが、私はいつものとおり、学生たちの討論にもっぱら耳を傾けていた。他の韓国人留学生と同じように、私もセミナーの時間には黙って座っているほうがらくだったのだ。

 

 ところが突然、指導教授が「ちょっと東洋圈の話も聞いてみようか」と私を指名したのである。そのころの私のドイツ語の水準は、シュリーマン方式を改善した独白のノウハウのおかげでほとんど完璧になっていた。私はさはどの困難もなく、韓国の事例を整然と説明し、教授や学生からの質問にもスムーズに答えることができた。セミナーが終わるとあるドイツ大女子学生が近づいてきて、私にこういった。

 

 「あなたも他の韓国人学生と同じように、ドイツ語をよく話せないせいで、じっと黙っているのかと思ってたわ。ドイツでギムナジウムに通ってたの?」

 

 それ以来、私は積極的に発表することにした。彼女の「他の韓国人学生のように」という言葉が私の自尊心を傷つけたのだ。そして、韓国人のために外国語の習得ノウハウを開発することになったのも、この自尊心が糸口たった。自尊心をしっかりともつことが、外国語で自分の意見をきちんと述べることの土台にもなる。

 

 ある企業の語学研修で講師を務めていたアメリカ人は、この韓国人の自尊心を巧みに利用した。彼の担当科目は英語によるディスカッションだったが、授業ではいつも、韓国人や韓国社会に対して挑発的なことをいって生徒たちをけしかけていた。すると講師の話になかば本気で腹を立てた学生たちが次々に手をあげて、英語で反論を加えた。むろんそれが彼の戦略だったのである。

 

 「韓国人が積極的に英語を話すのは、酒が入ったときか、腹を立てたときだからね。ぼくは後者の方法をとったのさ」

 

 彼は笑いながら、そう打ち明けてくれたものである。これも韓国人が英語を話せるようになる一つの方法かもしれない。

 

 だが、私のノウハウはこれまで述べてきたようにもっと体系的なものであり、韓国人の自尊心も傷つけない方法である。第一ステップから第四ステップまで、何度も登場するメニューである「大きい声で朗読する」ことなどは、シュリーマンも行っている。しかし、私独自のノウハウもある。英英辞典で基本語彙と文章力を学ぶというのと、ビデオや英字新聞(第五ステップで紹介)を活用するというのがそれだ。

 

 それは、わが国の人たちが受けてきた、いまも受けている問違った語学教育を、一から正しい内容に組み替える作業でもある。y」の作業を終えてこそ、韓国人は英語を「生きた言語」として習得することができる。言語を「解釈」するとか「研究」するという行為は、ラテン語や他の古代語のような、現代ではすでに、死語となった言語にこそふさわしいものである。したがって「英文解釈」などという言葉が通用しているかぎり、韓国人が生きた英語を習得できる曰はまだ遠いといわざるをえないのだ。

 

『英語は絶対、勉強するな』チョン チャンヨン著 (定価1300円)より