転移性肝癌の原発巣と治療


 (1)原発

 日本病理剖検輯報 による転移性肝癌の原発巣(肝原発および造血系腫瘍は除く)。各臓器の肝転移率は胆嚢、肝外胆管、大腸、膵臓がやや高頻度である。転移性肝癌の原発巣は肺、胃、膵臓、大腸の順に多い。

 肝転移による症状は末期まであまり無いことが多く、手術後の経過中画像診断や腫瘍マーカーの再上昇で発見されたり、検診の肝機能異常で発見されることもある。末期には黄疸・腹部膨満感が出現する。

 (2)治療

 転移性肝癌の治療は、まず原発巣の切除可能なものは手術した方が転移巣の治療効果が期待できる。転移性肝癌は、肝細胞癌と異なり肝硬変の合併がないため肝予備能が保たれていることが多く、限局性の転移巣は二区域や三区域切除などの手術が可能である。しかし、多発性の場合は、化学療法を施
行する。化学療法は基本的には原発巣の抗癌剤感受性の高いものを使用する。投与方法としては経静脈的および経動脈的(間欠的またはリサーバー留置)方法がある。抗癌剤の種類は、原発巣によるが、ここでは大腸癌からの転移の場合について述べる。

 大腸癌からの肝転移に対する全身化学療法の有効率は、 5-FU22%、 Te-gafur (FutrafulR) 17%、 MMC 18. 5%12)である。多剤併用療法としてMFC療法(MMC、 5-FU、 cytosine arabinoside)が使用されていたが、最近では5-FUとleukovorinの併用が注目され30.3%の有効率が認められている13)o leukovorinは葉酸の誘導体であり、 5、10 - CH 2 - tetrahydrofolateを増加させ、 FdUMPとThymidylate Synthase の結合を強くすることにより、 5-FUの作用を増強させる。いずれにせよ5-FUが最も有効であり、他剤との併用療法が検討されている。リサーバーを用いた間欠動注療法では、 MMC、 ADR、 CDDP、 5-FUが主として用いられる。