女性の性器反応(興奮度)を測定するフォトプレスチモグラフでわかったこと

男性は大抵、特に若いころに、不適切な場面で勃起してしまう困ったという体験を数多くしています。あるスラング辞典はbone of contension(争いの種)という言葉を「オリンピックのビーチバレーを妻と見ているときの喧嘩のもととなる勃起」と定義します。ずいぶん昔のことですが、私もそういう経験をしたことがあります。そん時当時のガールフレンドに、人生が公平であるなら、女性も性器の興奮程度が外からわかるように膣センサーと表示ライトを取り付けてしかるべきではないかとの意見をぶつけたことがあります。彼女の答えは「勝手に思ってなさい」でした。

女性の性器反応の測定はそれほど単純ではありません。フォトプレスチモグラフと呼ばれるタンポンサイズの測定器を膣に挿入するのが一般的です。この測定器はケーブルで外部の記録装置につながっています。測定器は膣の内壁に光を当て、反射光の色を測定して、そこを走る血管に溜まっている血液量の指標とします。この充血が、膣駅の分泌につながります。血液の血漿がしみだして膣液のもととなるのです。膣のフォトプレスチモグラフは、測定的にですが、実際に性的反応を測定できるものと思われます。性的な刺激には強く反応し、性的内容を伴わない刺激には基本的に反応しません。

では、チヴァーズとベイリーの実験の女性被験者の話に移りましょう。男性の場合と同じく、女性の同性愛社、異性愛者とも、主観的興奮程度の事故報告では、ヌードのエクササイズ映像が最も低く、相手のあるセックスの映像が最も高く、マスターベーション映像がその中間でした。しかし男性と同じだったのはそれだけでした。主観的興奮の対象カテゴリーについては、異性愛の女性の同性愛の女性もある程度それぞれの性的思考に沿った限定的な自己報告がなされましたが、その報告は性器の反応と一致しませんでした。異性愛の女性は、女性のマスターベーション映像にも男性のマスターベーション映像にも、そして女性同士のセックス映像と男性同士のセックス映像にも性器が強く反応しました。同性愛の性器の反応は女性の性的映像に対してやや偏りが見られてものの、やはり男性同士のセックス映像や男女のセックス映像に対しても強く反応しました。さらに女性は、同性愛者も異性愛者も、ボノボの交尾の映像で性器が反応しました。男性には見られなかった反応です。 

いくつかの独立した研究から見えて来るのは、女性は、異性愛者も同性愛者も、男性よりも幅広い刺激に対して興奮を覚えるということ、そして性器の興奮は自己報告される興奮の感覚よりも非常に幅広い刺激により引き起こされるということです。

なぜ女性の膣はこれほど多様な性的刺激に反応するのでしょうか。自分では興奮していないという刺激に対してまで反応するというのはどういうことか。女性に関しては性器の反応と脳スキャンと主観的な興奮を同時に揃えて測定したデータがありませんが、ここまでの研究から示唆されるのは、主観的藩王と脳スキャンのデータは女性でも相関しますが、膣の測定値は対応しないということです。

この不整合についてはいくつかの説明が考えられます。女性が性的映像を見ている間に考えることは男性と大きく異なり、その違いが脳スキャンの結果と、間接的に膣の反応とに影響を及ぼしているのかもしれません。あるいは、女性では膣や直腸に測定器を挿入してセックスのビデオを見るという研究に参加しようという人が少ないため、研究で測定された女性たちが女性全体の適切なサンプルになっていないということも考えられます。エレン・ラーンやメレディス・チヴァーズらは別の可能性を指摘します。女性の膣はもともと自動的、反射的にさまざまな性的刺激に反応するというのです。この現象は進化論的に説明でき、反射的な膣液の分泌は、性的な接触で、特にその接触が急激、あるいは同意のないものである時に、傷害や感染の危険性を減らすために女性の祖先が適応したものだ、というのがその考え方です。実際、レイプ被害女性を対象とした調査で、それが同意のないセックスで、自分には恐怖だけで興奮などかけらもなかったと報告されている事例でさえ、膣液が分泌されていた女性が多いことがわかっています。同様に、エレン・ラーンらの報告によると、性的興奮に障害のある異性愛女性の治療中には、性的画像を見せて主観的興奮がほとんどあるいはまったくない時でも、膣が反応するといいます。女性の性器が幅h路異性的刺激に反応する原因はまだわかりませんが、女性の膣の反応が、当人が表明する意見とは異なる感情を明らかにしてるという考えが正しくないことだけははっきりしています。