心血管イベントに対するACE阻害薬とカルシウム拮抗薬の組み合わせ

医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に報告された研究成果によると、アメリカ、ミシガン大学のケニス・ジャーマーソン博士らは、ACE阻害薬とカルシウム拮抗薬の組み合わせによる治療のほうが、ACE阻害薬と利尿薬の利尿薬の治療よりも、心血管イベントの発症を抑制させるということを証明しました。

このACCOMPLISH研究という無作為化二重盲検試験は5か国548施設の、心血管イベントリスクの高い、例えば心筋梗塞脳卒中の既往歴があったり、腎機能障害があったりといった患者1万1506人を対象に治療をし、心血管発症による死亡などを調べたものです。すると、ACE阻害薬とカルシウム拮抗薬による治療群は、ACE阻害薬と利尿薬の治療群に比べると19.6%の発症抑制が認められたのです。この結果を踏まえれば、おのずと、血圧の薬を2つ組み合わせるやり方の優劣が決まろうというものでしょう。

日本高血圧学会のガイドラインでは、この研究について言及しています。しかしながらガイドライン作成の過程での議論で「最新のACCOMPLISHにおける高圧・臓器保護効果については、ACE阻害薬と利尿薬併用群よりACE阻害薬とCa拮抗薬併用群のほうが、高圧効果、心血管エンドポイント発症効果のいずれにおいても有意に優れることが示されました。しかし、日本の先生方は利尿薬の使用頻度がきわめて少なく、食塩摂取量の多い日本国民としては、少量の利尿薬を積極的使っていただこうということになりました」というのです。使用頻度が少ないということが理由になることはないと考えますし、食塩摂取が多いから利尿薬という発想の根拠もありません。これでは、最新の世界の医学論文発表があってもガイドライン作成は、結局委員の裁量でどうにでもなるということになりかねません。

その後、ACCOMPLISH研究の腎臓に対する効果の成果も報告され、腎臓病の進行抑制にも、ACE阻害薬とカルシウム拮抗薬の組み合わせがいいという医学論文が、ランセット誌に発表されました。

公平に考えると、2つの薬の組み合わせは、ACE阻害薬とカルシウム拮抗薬が、利尿薬よりも、先に来るべきだと思います。ARBを第一選択にしたときも、やはりカルシウム拮抗薬との組み合わせがよいだろうと考えます。ACE阻害薬とARBでは、基本的には、心血管イベント抑制効果はほぼ同等と考えれるからです。