モルヒネの副作用の対処

 モルヒネによる癌疼痛のコントロールと同様に,その副作用にも注意を払って対処していかなければならない。モルヒネが引き起こす様々な副作用に対しては有効な対処方法が各専門書に具体的に記載されているが、特に下記の副作用に対してはモルヒネとの関わりを理解しておく必要がある。

 ① 嘔吐

 嘔吐はモルヒネの用量限界のサインではないことを医師を含め,他の医療従事者および患者が知っておく必要がある。特に患者へは,有効な制吐方法があり2週間ほどで吐き気も感じなくなるので,モルヒネの服用を続けるように指導する必要がある。皮下注またはエピ注に切り替えても制吐できない症例がまれに存在するが,その場合は他のオピオイドケタミンの持続投与などを行う。

 ② 便秘

 モルヒネによる腸管運動の抑制作用により便秘は必ず起き,かつこの副作用に対しては耐性が出来ないためモルヒネの投与を続ける限り,下剤でのコントロールを行わなければならない。便秘傾向を軽視すると,最悪の場合は浣腸や摘便にも反応しなくなり対応に苦慮する結果となる。ピコスルファート液など,患者自身が排便の状態に応じて用量調節できるタイプのものが望ましい。

 ③ 呼吸抑制

 モルヒネによる呼吸抑制は鎮痛に用いられる適切量であれば希であり,過量であればセデーションが先行するため‥鬯者のサインを見逃さないようにすることが重要である。まれに,痛みを止めるモルヒネ量とセデーションがかかるモルヒネ量が接近している場合があるが,鎮痛補助薬の併用でモルヒネ量を減らしクリアな状態を得ることが可能である。

 その他,幻覚幻聴,排尿困難などに対しては事前に対処のプログラムを作成しておくことで,適時副作用をコントロールしていくことができる。モルヒネが引き起こす副作用のほとんどは対処が可能であり,モルヒネの有効限界を示すものではないことを医師を始め,薬剤師・看護婦が熟知しておく必要がある。さらに副作用を呈した患者には,有効な薬物療法があり安心してモルヒネの服用を続けるよう服薬指導する必要がある。