WHO方式癌疼痛治療法

 世界保健機関により癌疼痛救済計画が1986年から実施され,同時にWHO編集の(がんの痛みからの解放)が発刊された。 WHO方式癌疼痛治療法はこのWHO癌疼痛救済プログラムの中で,癌の予防,早期発見,治癒治療に次ぐ第四の癌対策として策定されたものである。また,これは世界中全ての病院,診療所においても使用できるように工夫されたものである。

 この中では,痛みの強さに応じて3段階に分けた鎮痛薬の選択順序と,治療に用いる基本薬のリストを示している。さらに,癌疼痛治療の基本原則を次のように要約している。

 ① by mouth : 経口投与を原則とする。
 ② by the ladder : 鎮痛薬を効力の順に選ぶ。
 ③ by the individual : 痛みの強さに応じて投与量を決定する。
 ④ by the clock : 時刻を決めて規則正しく投与する。
 ⑤ attention to detail : 副作用を計画的に(確実に)防止し、患者の

  心理状態に配慮する。

 これに伴い,わが国においても厚生省と日本医師会との編集による[がん末期医療に関するケアのマニュアル]が全国の医療機関に配布され,また1990年の麻薬取締法の一部改正に伴う医療用麻薬の取り扱い規制の改善が行われた。さらに同年,日本薬局方からモルヒネをはじめとする医薬品の全ての極量が削除されるなど,近年,癌患者の痛みの解放に積極的に取り組める環境が整い始めた。

 モルヒネの特性とモルヒネがもたらす副作用を中心に,癌疼痛におけるチーム医療などについて述べる。