子宮(頸・体)癌細胞の細胞回転と抗癌剤の作用点

 子宮癌は子宮に原発する上皮性悪性腫瘍で,本邦における婦人科悪性腫瘍のうち約90%を占めている。解剖学的に子宮頸部に発生する子宮頸癌と,子宮体部に発生する子宮体癌に分類される。本邦における両者の発生頻度の比率は,子宮頸癌の方が高く約90%を占め,子宮体癌は子宮癌全体の約10%を占めている。しかし近年食生活の欧米化などに伴い,子宮体癌の発生頻度は増加傾向にあると言われ注目されている。

 子宮頸癌および体癌の治療のfirst choice は,手術療法あるいは放射線療法であるが,最近これらに化学療法,免疫療法およびホルモン療法等の薬物療法を組み合わせた集学的治療が実施されつつある。特に進行症例や再発癌など全身疾患の状態となった癌患者に対しては,全身療法である薬物療法が第一選択となり,最近は新しい抗癌剤の開発も進みつっありその効果は大いに期待されている。

 癌細胞の細胞回転と抗癌剤の作用点との関係については,実際に化学療法を施行するにあたって非常に重要なポイントとなる。

 癌細胞の本質はその無制限,無秩序な細胞増殖を続けることにある。しかし,腫瘍を構成する癌細胞が常に増殖を繰り返しているわけではない。cell cycleを回転し分裂増殖をつづける細胞集団(proliferating compartent)はその一部分で,それ以外はcell cycle を回転することなく非分裂相にある細胞集団(non - proliferating compartment)で占められてしる。

 現在使用されて卜る抗癌剤は全てその作用点は細胞周期のいずれかの期に存在し,非分裂相にある細胞には抗癌剤は作用しないとされて卜る。抗癌剤がその効果を発揮するためには癌細胞が増殖期にあり, cell cycle を回転していることが必要条件となる。さらに個々の癌に対してそれぞれ感受性を持った抗癌剤を選択投与することが必要である。いまだ臨床に応用できる優れた抗癌剤感受性試験が確立されていないのが現状である。