遺伝子組み換え作物農法のシステム

現在の段階の遺伝子組み換え作物農法は、目的の作物の収量の確保に重点がおかれるから、従来の効率優先のシステムの延長線上にある。そこでは農耕地のトータルな安全、安定は軽視される。

(1)野生生物に対する脅威

 農耕地は半自然とはいえ、いまなお、作物の他に多数の人里植物、虫、鳥、けものなどの集合体である。私たちの技術が未熟なため、作物以外の生物のいくつかを、雑草、病害虫として、農薬で強制的に排除してきた。それは一面で多大な労力を必要とした。労力の軽減をキャッチフレーズとした化学農薬が多用され、便利さの半面、農家の健康被害、消費者の不安、環境の劣化を招いたことは周知の通りである。

 すでに有機農法や自然農法においては、作物以外の生物の存在を尊重することで、化学農薬にたよる慣行農法にまさる効果をあげている。将来は作物と多数の人里植物、虫、鳥、けものなどの集合体が持続可能な農業の堪盤となることが予想されるとき、遺伝子組み換え作物農法のシステムは、これと相容れない性格のものといわなければならない。

(2)在来品種に対する脅威

 現在でもすでに農作物の品種は経済上の観点から統一化され、少ない品仲の大規模な栽培が拡大しており、在来の品種は経済価値が低いとして人為的に消滅してしまった。この結果現在でも、我が国のトウモロコシ栽培は米国の一代雑種で占められ、在来の諸品種は市場から姿を消している。

 遺伝子組み換え作物による農法はこの傾向を一層強化するであろう。それは作物の遺伝子のプールを一一方で狭ばめることに連かっている。遺伝子工学によって、種を越えて欲しい遺伝子を導入することができる現実に酔って、歴史的に蓄積されてきた諸品種という遺伝子のプールを放棄するという愚を犯してはいないだろうか。

農業における多様性の意義

 近代農業は効率の向上においては著しい成果をあげた。機械化、化学肥料の多投、各種の農薬の施用によって、省力化と収量の増加をもたらした。 しかし、その半面、農家の健康被害、環境破壊などの負の結果をもたらし、場合によっては農耕地の砂漠化のような結果を残した。 21世紀の農業のあり方として、持続の可能な農業という言葉が、しばしばいわれるが、持続の可能な農業の1つの重要な内容が農業における多様性ということであろう。

 近代農業が経済性と効率を鋭く追求したなかで、広大な面積をもつ甲。作肢耕地が当たり前のように広がったが、混作による肥料の節約、病虫害被害の軽減とか、自然農法においては多少の雑草の混生を許すことで労力の省力をもたらすなどの縄験が知られるようになって、農業生産の意義が検討されている。