肢端紫藍症、女子下腿うっ血紅斑、皮膚紅痛症、高血圧性潰瘍、ライル死指

1 肢端紫藍症acrocyanosis (acroasphyxia)

 若い女性の四肢末端、ときには耳朶・鼻尖・殿・乳房が、寒冷によって、紫藍色を呈し、まれに壊死に至る。ときに蟻走感あるいは疼痛を、しばしば多汗症を伴う。思春期すぎに自然治癒が多い。低温に対する末梢皮膚血管の機能異常であり、マッサージ、浴療法、禁酒、難治のときは交感神経切断術。

2 女子下腿うっ血紅斑erythrocyanosis crurum puellarum s。 feminarium〔KlingmUller 1925〕

 肥り目の若い女性の下腿下1/3に紫藍紅色のやや硬い腫脹が生じ、褐色調の毛孔性角化か伴い、触れると冷たい。寒冷による動脈収縮、静脈弛緩があってうっ血し、毛孔に角化を生ずる。冬期増悪、内分泌障害〔月経不順〕が基礎にある。スカートの長さと関係あり、ミニでは大腿内側にも及ぶ〔寒冷の影響〕。近時肥満男児の大腿・殿部[皮下脂肪の厚い部位]にも見られる。 erythrocyanosis cutis symmetricaともいう。マッサージ・寒冷交互浴・赤外線・紫外線一女性ホルモンなど


3 皮膚紅痛症erythromelalgia〔Weir-Mitchell 1872〕

   成人の下肢末端が温熱[27~36℃以上]によって潮紅腫脹し、灼熱痛、触痛を生じ、多汗となり、皮膚温が上昇する。冷却・安静によって軽快。特発性と続発性〔キノコ中毒・自律神経失調・多血症・糖尿病・高血圧・SLEがあり。わが国ではドクササコ〔ヤブシメジClitocybe acromelalga〕によること多く、摂取後数日で手足に疼痛、約1ヵ月続くが、疲労、睡眠不足で死亡することもある。毒成分はclitidine。一般にchemical mediator として、セロトニン・プロスタグランジンなどが考えられ、一方多血小板血症・血小板機能亢進〔cyclooxygenase亢進→プロスタグランディン産生〕・血管運動障害による微小血管閉塞(microvascular occulsion)によるものもある。治療:安静、患肢挙上、冷却、アスピリンロキソニン


4 高血圧性潰瘍ulcus hypertonicum 〔Martorell 1945~1951〕

  本態性高血圧症の高年女子の下腿下部伸側に両側性に生ずる、治癒傾向の少ない、激しい痛みのある、しばしば手掌大に及ぶ浅い打抜き像を呈する潰瘋。細動脈の硬化・閉塞による老人性壊疽(senile gangrene)とほぼ同義。

5 ライル死指digitus mortuus 〔Reil〕、 toter Finger

   寒冷により、突然1ないし数指が蒼白となり冷たくなる。母指・小指は通常侵されない。数分持続して寛解するが、発作性に反復し数年に及ぶ。青成年婦人に多い。寒冷および自律神経異常による指動脈の攣縮か原因である。寒冷を避け、温浴し、あるいは女性ホルモンを投与する。