発癌遺伝子よりも癌抑制遺伝子のほうが重要
「癌研究の新しい方向といえることは、発癌遺イ云子よりも癌抑制遺伝子のほうが重要だということです。癌細胞では癌抑制遺伝子が欠失していたりする。だから癌になるの
ですが、癌抑制遺伝子はクローニングしにくかったんです。そこで新しい手法を使って、癌抑制遺伝子をとっています」。 舞い上がってるものだから、はにかみ氏の話がウワの
空である。とにかく、癌抑制遺伝子が扼研究の新しい動向だということらしい。
バイオサイエンス全体で光っている分野を伺った。
「癌研究がホットだから、やっぱり癌でしょう。遺伝子の研究ではイースト(酵母)が盛んです。ショウジョウバエや線虫も盛んになってくるでしょう。未解明な分野として、記
憶とか感覚とかが重要な研究分野になってくるんじゃないですか」
「こういうことは、みなが言うことですけど」と言いながら、みなが言うようなこ
とを言った。
研究グループを小規模化している研究体制の動向も伺った。
「アメU力の研究社会ではクリエイティビティ(独創性)をとても重要視しています。そして、クリエイティビティ(独創性)を高めるように研究体制が見直されています
。エヌシーアイ(NCI=国立癌研究所、NIH)でもクラウズナーが所長になって少し変わってきました。ポイントは、1つ1つの研究グループを小さくして、ユニークな研究を
出させようとしていることです」日本は個人経営の小さなお店で、アメリカはスーパーマーケットみたいな大型店、という対比で、研究を進めているとばかり思っていた。日本
は竿で小舟を巧みに操り、アメU力は鉄の軍艦で研究を進めている、とばかり思っていた。日本では、「ミソ」、「コツ」、「秘伝」を重視した小手先の研究で、アメリカは「
政策(ポリシー)」、「システム」、「物量」、「討論」で研究を進めていると思っていた。
30人とか50人という大きな研究室もまだあります。ボス教授もまだいます。けれど、アメリカでは、現在はそれを廃止する方向です。むしろ日本のほうが大きな研究室
をかかえで、大規模にやっているところがいくつもあります。そして、日本ではまだそういう大規模化を推進することで研究のレベルを上げようとしてる気がします。しかし、
そういうのは、もう古いタイプの研究システムですね。ヨーロッパでも、個性的な小さなグループを指向しはじめています]日本の研究体制は変わっていない
在米12年にもなると、もう日本のことに関心がないかもしれないけど、アメリカから見ての日本の動向を伺った。
「日本は隴くほどよくなっています。ただ根本的な問題が1つあります。それはシステム、つより研究体制が変わっていないってことです。例えば、優秀な研究者は拠点大学に集まる傾向がある。その反面、ぜんぜん研究活動してない研究室が山のようにある。ボクも日本の田舎の大学にいたから、よくわかります」
[どうして、ぜんぜん研究活動してない研究室が山のようにあるんでしょうか?]
「それはですね、日本には小さなグループをサポートするシステムがないからなんです。研究室内ではテクニシャン、秘書、ポスドクなどの人材面、研究室外では病理材料、
抗体、細胞などを供給する支援システム、さらに、コンピュータや新実験技術を導入するインフラストラクチャー、研究内容や研究体制を本気で議論する場、そういうものがな
いんです また、教授にならなければ独立した研究グループを形成することができないというの枉システムとして欠陥があります」
[研究支援システムがないものだから、教授になっでも地方にいては、人材も情報もない。優秀な人は東京大学、京都大学、大阪大学などの拠点大学に移っていく拠点大学も
、大学の評判を保ちたいのと優秀な学生を集めるために、地方で研究成果を上げた教授を引っ張ってきてしよう。そうなると、地方大学はますます弱体化する。それに、拠点大
学も自分の大学で研究者を育てようとしない、というか育だない。こういうシステムが改善されなけれ|虱いつまでたっても底力のある国になれませんよ」
「任期制というのは、アメリカでは研究者の独立を支援するためにあるんです。ポスドク(研究員)でもアシスタント・プロフェッサー(助手)でも、任期があるから、その
間に頑張って研究して成果を上げるんです。まわりの人もそれをサポートする。もし全く任期がなけれ|虱一度職についた人はのんびりしてしまいます。そしたら研究成果がでな
いから、結局、独立した研究者になれないんです。ところが、聞くところによると、日本の任期制は、助手を辞めさせるためだというじゃないですか ということは教授の命令
に従わせるシステムですよ。日本は本気で研究をよくしようと考えているんでしょうか?」
はにかみ氏に渡米のころのお話を伺った。すると、最初アメリカにきたときは2年間の予定だったとのこと。「2年いるのも心細い」と思ったそうだ。でも気がついたら何と
なく]2年も經っでしまったらしい。「このままアメリカでやるのか、それとも日本に帰るのか、半々の心境だ」、とはにかみ氏はおっしゃった。
不肖ハクラク著より