「すみません」の三つの英語表現
日本語を勉強し始める外国人は最初、日本語の「すみません」は翻訳すれば、I’m sorry. というのだろうと思う。つまり、「すみません」は謝罪の表現だと思うわけである。
しかし、「すみません」の使い方を観察すると、どうも「謝罪」だけではないことが明らかになる。日本人はとにかく「すみません」をよく使う。何かをいただいたといっては「すみません」、道を開けて欲しい時にも「すみません」、お願いする時にも「すみません」、日本の文化は「すみません文化」と言えるのではないかと思うほどである。
とは言いながらも、「すみません」は大雑把に分けると、英語の三つの表現に集約できるのではないか。
(1) Excuse me.
(2) Thank you.
(3) I’m sorry.
(1)のExcuse me.は、たとえばコンサートホールなどで、座っている人に立ってもらって通る時などに「すみません」という状況で使われる。通る人が自分だけでなく自分のガールフレンドも一緒であれば、meをusにしてExcuse us. と言うのである。これは一種の謝罪であるが、時間的には未来の、相手にかける迷惑についてのものである。これはすんでしまったことには使わない表現である。I
(2)のThank you.は「すみません」が感謝の意を表現することを指すものである。統計をとったわけではないが、この意味で使われる「すみません」がいちばん多いのではないだろうか。
ところで、Excuse me. の表現は「これからのこと」に関して「すみません」というが、Thank you.の場合はどうだろうか。これは具体例を考えてみればよいだろう。過去のことに言及する言い方としては、Thank you for such a great meal ! (ほんとうにおいしいごちそうをありがとうございました)などがある。 Thank you for taking this time for meバ私のために時間を割いていただいてありがとうございます)という場合は、現在進行中のことに関して感謝している。 Thank you for being willing to go to so much trouble for me. (私のために面倒なことを快くやってくださることに感謝します)は未来の行為に礼を言っている表現である。こうしてみると、Thank you.は、過去、現在、未来の行為に関して使えるということになる。
(3)は謝罪の「すみません」にあたる。このI’m sorry.の表現の時間的要素をちょっと考えてみよう。
A. I'm sorry about spⅢing coffee on you.
(コーヒーをあなたにこぽしてしまってごめんなさい)
B. I'm sorry about this.
(このことについちや悪いと思っています)
C. I'm sorry but l cannot come to your wedding・
(悪いけどあなたの結婚披露宴に出られないんだ)
Aは過去、Bは現在、Cは未来のことに言及していることは明らかで、したがって、I’m sorry.は三つの時制に関して使えるということになる。
「すみません」は謝罪の要素が主要なものとしてあるわけだが、日本語の謝罪表現としての「すみません」はI’m sorry. とまったく同じなのかどうか、やや大げさに言えば、日米の比較文化といった観点から考えることができます。