実験室以外・医者以外の職業

 

  研究者として生きる道のもう1つの新しい動向は、実験室以外で働く人生だ。科学研究が好きだし、博士号もとった。けど、実験室での研究も単なる|つの労働である。人生は実験室での研究がすべてではない。豊かに幸福に生きる手段として職業があるだけだ。だから実験室以外で働ける職業を選びたい。イイでしょう。0Kです。

 ロビンスーロス(C。 Robbins一日oth)の『研究とは異なる科学の仕事』

 (Alternative Careers in Science : 1998)4)という本には、バイオの修士号・

 博士号をもつ人や医師免許をもつ人が、実験室以外の職業・医者以外の職業を選んだケースが書いてある。もちろん、アメリカの例である。例えば、サイエンス・う

 イター、出版、テレビ・ラジオ・新聞・電子メディアのジャーナリスト、バイオ・べンチャー企業経営者、科学アナリスト、投資アドバイザー、バイオ・コンサルタント、特許、医薬品販売・マーケティング、研究人材派遣、研究企画一政策立案、国際バイオ政治、研究費配分、政府の科学運営官などの職業を選んだ大たちが描かれている。

 どの大も生き生きと仕事をしている。なかには、カリフォルニア工科大学ノーベル賞受賞者の研究室出身者とか、高校2年から飛び級で大学に入学した人がいる。そして、どの人七、「実験室以外・医者以外の科学的職業」を積極的に選んでいる。

 つい10数年前よでは、研究博士号(Ph。D。)をもつ大や医師免許(M.D.)をもつ大がこういう分野に進むのは珍しかった。しかし最近は、大学院生、大学教官、企業研究者、医師が、「実験室以外・医者以外の職業に就きたい」という相談や、「あなた(ロビンスーロス)のオフィスで懴きたい」という就職インタビューの申し込みを頻繁にしてくる、という。

 アメリカでは、バイオ研究者の職塲環境・職業意識が急速に変わってきているのである。研究博士号や医師免許をもつ人の生き方にも、多様な選択肢のある社会が訪れようとしている。アメリカの動向がいずれ日本にも伝わってくるだろう。

 というわけで、研究、研究、研究とそうあがめたてま⊃らなくてもいい。博士号だってどうっでことはない。大学教授も別に偉いわけじゃない。科学研究をもっと幅広くとらえて、充実した人生を送ろうじゃないの。自分の大生なんだからネ。

不肖ハクラク著より